液晶に電界を加えると分子配向が変化し、光に対する応答が変化します。
これを応用したものが液晶テレビや液晶時計です。
ところが電界をもう少し強くすると分子配向変化から様々なパターンが発生します。
これは皆さんが朝のみそ汁の中に見る熱対流によるパターンと同じで、温度の代わりを電界が行って対流パターンが生じているものです。
一方、磁界を加えても類似のパターンが現れます。そのようなパターンの一例を次頁の図に示しました。これを非平衡散逸構造と呼びます。生体もそのような構造の一種です。
この研究では、このような非平衡下に現れるパターン(散逸構造)がどのようなメカニズムで現われ、
それがどのような数理で捉えられ、どのような理由で別のパターンに転移するかの物理法則を追求することを目的としています。
Williams Domainの形成過程(WD_form) Planar配向したネマチック液晶セルに,対流しきい値以上の電場を時刻0に印加した後のWilliams Domainの形成過程を示す. Planar配向は不安定になり系内のいくつかの場所から対流周期パターンが現れ始める.それらは成長し,やがてお互いに衝突をする. このとき,元の系が連続並進対称性をもつので周期パターンには位相の任意性があり,そのため衝突した場所では欠陥が現れる. これらの欠陥は徐々に対消滅していき,最終的に完全な周期パターンへと至る. 対流の局所的な振幅は比較的早い段階で充分成長し,その後は欠陥と位相のダイナミクスが支配的となる. |
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Grid Pattern の形成過程(GP_form) 欠陥乱流の状態からさらに電圧を上げていくと,生成される欠陥の密度が高くなり,欠陥間の距離が短くなる. その距離が元のパターンの周期程度になると,欠陥乱流中に再びグリッド・パターンと呼ばれる2次元周期パターンが現れる. |
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Grid Pattern のPhase Wave(PhaseWave) Grid Pattern の状態から,さらに少し電圧を上げると個々のグリッドは左右に傾き振動するようになる. これらの振動子を大きな視野で見ると,その位相がマクロなスケールで位相波として伝搬してい様子が観測される. この位相波は,ターゲット状やスパイラル状のパターンを形成している場合もある. これは振動子として普遍的に捉えれば,反応生成物が時間振動する非線形化学反応系(例えばBelousov-Zhabotinskii反応)の 振動位相パターン形成と同じ現象であり,同じ数理で理解される. |
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DSM1-DSM2 の遷移過程(DSM1to2) 振動Grid Patternの状態からさらに印加電圧を上げると,Grid Patternは崩壊し,乱流状態,すなわちDynamic Scattering Mode(DSM)へ至る. このDSMには異方性を反映して2種類が観測される.Grid Patternが崩壊して最初に現れるDSM1は, 元のプレーナー配向の影響が残っており,空間的に異方的である.電圧を上げて行くと, あるしきい値でDSM1の中から別の乱流状態(DSM2)が核生成を経て現れる.動画中の黒い部分がDSM2の領域である. DSM2の成長過程は結晶成長に似ており,それとの比較も行われ良い一致が得られている.DSM2は等方的な充分発達した乱流だが, DSM2の状態で電圧を切ると,元のプレーナー状態にすぐには戻らず,系内に多くのディスクリネーションが残る. これはDSM2がディスクリネーション乱流であることを示し,超流動流体(ヘリウムII)の乱流における量子渦(特異線)乱流と その遷移過程によいアナロジーがあることが報告されている. |
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